第21章 秘密と葛藤
しのぶの向けた視線の先には積み上げられた木箱の中に、綺麗に並べられた大量の小さな小瓶。
ここまで考えて治癒能力向上を試みていたのではないが、今現在は範囲をある程度指定して、必要な分だけ必要な場所にのみ力を出すことが出来るようになった。
あれくらいの量なら四半刻もかからず全ての小瓶を満たせるだろう。
「かしこまりました。終わりましたら器具などを洗いますので、どんどん使用済みのものは置いていってください!他に何か出来ることがあれば、いつでもお声がけ下さいね」
2人の穏やかな表情と1人の険しい表情に笑みを返し、更紗はさっそく積み上げられた木箱の前へと移動して木箱を数個横一列に並べ出した。
「あの醜女は何を」
「愈史郎」
「……あいつは何をしているのですか?」
窘められた。
しのぶの黒い笑顔は見て見ぬふりだが、愈史郎にとって珠世の言葉は絶大な効力を発揮するようだ。
「一度にあの容器に力を入れるおつもりなのでしょう。貴方もきちんと見ていてくだい。更紗さんがどのようにして力を出すのか……そしてその根源は一体何なのかを考え、彼女への対応を考えてください」
視線を珠世から映し終わる頃……大量の小瓶には既に淡く光る液体が満たされていた。