第21章 秘密と葛藤
「いつ鬼が攻めてくるか分からないので、体に半分くらいは蓄積させたままにしているんです。枯渇状態にまですると蓄積させるまでに時間が掛かってしまうので。今は胸より少し下くらいなので、苦しいと言っても大したことはないですよ」
事も無げに言ってのける更紗の手を掴み、しのぶは急いで研究室の中に招き入れて椅子に座らせ、真剣な眼差しでゆっくりとした口調で話し出した。
「溜まる速さが尋常じゃありません。今まで力を使えない時はどうしていましたか?外に出す以外で何か策を講じていたことはありませんか?」
切羽詰まったしのぶの表情や口調に面食らいながら、更紗は今までのことを脳内の引き出しを片っ端から引っ張り出していく。
するとその中で1つ、思い当たることがあった。
「外に出せない時は、体の中でお漬物のようにしていました。えっと……重い漬物石でぎゅっと押し潰して余分な空間を作り、力が蓄積出来る場所を確保していた感じです」
身振り手振りで再現していると、どんどんしのぶの表情が悲壮に満ちてきて、珠世も扉の前から慌てて更紗の前へと歩み寄り、額に触れたり脈を測り出す。
何が2人をそうさせてしまっているのか分からず不安げに眉を下げていると、愈史郎が険しい表情で相変わらず更紗を見下ろしながら解説を始めた。