第21章 秘密と葛藤
「あ!しのぶさん、珠世様!遅くなり申し訳ございません!更紗です、今日からよろしくお願いいたします」
僅かに開いている扉から顔をひょこっと出し中を覗くと、眉を下げて申し訳なさそうな表情をしている珠世と、何やら黒い空気を撒き散らしている笑顔のしのぶの顔が見えた。
「すみません、更紗さん。この子は愈史郎。私が二百年以上掛けて唯一鬼に出来た子なんです。研究の手伝いをしてくれているので……よろしければ仲良くしてやってください」
たくさん聞きたいことがある。
だが聞いていいのか判断のつかない事柄ばかりなので、おいおい話しを聞かせてもらうことにして、まずは自己紹介を始めることにした。
「研究のお手伝いをされているのですね!初めまして、愈史郎さん。私は月神更紗と申します。見た通り若輩者で至らない事も多いと思いますが、精一杯がんばりますのでよろしくお願いします」
「……醜女の名前なんていちいち覚えてられるか」
更紗はしょんぼりである。
別に醜女と言われようが容姿に関しては強い執着がないので構わないが、どう考えても歓迎されていない雰囲気だからだ。
「愈史郎さん、貴方は挨拶の一つも出来ないのですか?先ほどから聞いていれば更紗ちゃんの悪口ばかり。この子の能力があってこそ進む研究もあるので、あまりそう言った言葉を出さないでください」