第21章 秘密と葛藤
何度か曲がり角を間違えながら、ようやく辿り着いたのは目的地のある部屋の重厚な扉の前。
前と同じく洋風な造りのそれは、やはり不思議と純和風な屋敷に馴染んでいるが圧倒的な存在感を醸し出していた。
「ここまで来るとホッとします。もうしのぶさんや珠世様はいらして」
ガンッ
扉を叩こうと手を伸ばしたと同時だった。
既視感を覚える痛みが更紗の額を襲ったのは。
「いっ……たくないです……痛くない……なんでしょう……前と同じことが起こりました。今回は覗き見はしていないはずなのに」
鈍くも鋭い痛みが続く額を抑えながら蹲り、扉を開けた人物を仰ぎ見ると、しのぶでも珠世でもない青年が顔を顰めながら更紗を見下ろしていた。
「お前、本当に柱か?気配も感じ取れず良く柱になれたな」
口を開くなり辛辣なお言葉が更紗に向けられた。
我ながら情けないと思っていたところなので言われた言葉は特に気にならなかったが、その青年の特徴的な瞳孔に目を奪われ、何も言葉を出せずにいる。
「おい、醜女。いつまで蹲っているつもりだ?珠世様を……」
「愈史郎!何をしているのですか?!」
愈史郎……と呼ばれた青年の背後から、聞き覚えのある綺麗な声が聞こえ我に返った更紗は慌てて立ち上がった。