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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第21章 秘密と葛藤


本部へ到着した更紗は門をくぐり、広く手入れの行き届いた綺麗な庭を抜けたまではいいものの、玄関の前で立ち尽くしていた。
と言うのも今まで必ず杏寿郎がそばにいてくれたので、緊張していたとしても背中に手を当てて中へと促してくれていたのだ。

それが今日からは1人なので、入っていいのか躊躇っているのである。

「しのぶさんからは正面から入っても大丈夫と言っていただいていますが……いきなりお邪魔していいものでしょうか?……でもこのまま立っているだけでは時間に間に合いませんし……それは何よりいけません!お邪魔致します!」

周りには誰もいないし気配も感じない。
そんな中でも誰かに聞こえたらいいなと僅かな望みを抱いて大きな声を出してみるが、響いたのは自分の声と引き戸を開ける音だけだった。

少しだけ寂しさを感じながら草履を脱ぎ、端っこへと揃えてから屋敷の中へ足を踏み入れて、記憶を頼りに広い産屋敷邸の廊下を右へ左へと移動を繰り返し目的地へと急ぐ。

「……誰とも会わないものなのですね。お手伝いさんなどはいらっしゃらないのでしょうか?」

独り言は誰にも届かないので疑問が晴れることはないが、静まり返った屋敷内を歩くより、自分の声だけが聞こえるだけでも幾分か気分が紛れた。
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