第21章 秘密と葛藤
ほんの小さなお礼……手の平に乗せても簡単に収まるくらいの大きさの物1つで、まさか涙を流されるなんて思ってもみなかった更紗は、道の往来で紅の入った小包を手に持ちながら慌てだした。
「そ、そんな事ないです!隠の方々が隊服を仕立ててくださるから、私たちは鬼殺隊として鬼と戦えるのですよ?!普通の着物や洋服と違い、特殊な布を使われていますよね?きっと縫い合わせるのも裁縫係の方々だからこそ綺麗に出来るのであって……こんなに小さなお礼では足りないくらい助けられています!」
今更ながらもう1つくらいお礼の品に加えればよかったと後悔するが、見せてしまったからにはもう増やすことは不可能だ。
もうどうしようもないことは後回しに、まずは鈴村を泣き止ませなくてはと今度は更紗が鈴村の手を握りしめ、コツンと自らの額を鈴村の額へと軽く当てた。
「どうか涙を流さないでください。剣士、隠、裁縫係、刀鍛冶、その他にも色々ありますが、全部揃っているから鬼狩りの組織として成り立っています。誰かのために手足を動かしているのは剣士だけではありません。これからも私の隊服の調整、よろしくお願いいたします」
握り締めていた手が握り返され額を当てたまま鈴村へ視線を向けると、涙は滲んでいたが笑みも戻ってきている。