第21章 秘密と葛藤
時間で言うと四半刻ほどだったが、更紗にとってすごく充実した楽しい時間だった。
あれでもないこれでもない、こっちの方がいいなど色を見比べ様々な商品を手に取っては戻し……
そんな中で結局買ったのは紅と頬紅だけだった。
「本当にそれだけでいいの?煉獄さんからのお小遣い、ほとんど残ってるよね?」
化粧品の値段が分からないからと杏寿郎からは多めにお小遣いを渡されているが、買いすぎるのも気が引け……何より多く買っても使いこなせる自信が更紗にはない。
「これで十分です!少しずつ、自分で出来るようになれば買い足していこうと思います。あ、あと、これ。いつも鈴村さんにはお世話になっているので……買うか迷われていた物で申し訳ないのですが……」
自分の買ったものとは別に包んでもらった小さな小包を、今日や今までのお礼を込めて鈴村へと手渡す。
それに鈴村は視線を落とし、再び更紗へと視線を戻す頃には瞳にじわりと涙を浮かべていた。
「そんな……私は何もしてないのに。私たち隠より剣士の人達の方がいつも最前線で鬼と闘ってくれているから……鬼殺隊が成り立ってるんだよ?それなのに……」