第20章 柱稽古とお館様
1分間ほどそれを繰り返していると、ようやく昂っていた感情が落ち着きを取り戻し、涙でくしゃくしゃになってはいるがどうにか顔を上げることが出来た。
「……皆様、お時間を取らせてしまい申し訳ございませんでした。お館様、改めまして今後ともよろしくお願い致します」
笑顔の戻った更紗にお館様も笑顔を返すと、隣りに寄り添い座っているあまね様へと視線を動かした。
「あまね、更紗に新しい隊服と日輪刀を。その間、私は少しこの子たちと話しているから」
「かしこまりました。月神様、どうぞこちらへ」
立ち上がるあまね様に着いていっていいのか杏寿郎へ視線で問うと、行っておいでと言うように1度頷き返してくれたので更紗も笑顔で頷き返し、入口で待ってくれているあまね様の元へと早足で歩み寄る。
「急がなくて構わないからね。そしてここへ戻って来たら日輪刀のお披露目をしてほしい。皆、君の日輪刀の色が気になって仕方ないはずだから」
「え?そうなのですか?では急いで着替えて戻ります!お館様、皆さん、暫くお待ちください!」
くるりと踵を返しあまね様の後を意気揚々と歩く後ろ姿を見送ったあと、部屋の中は笑い声で満たされた。
「おい、お館様に急ぐ必要ないって言っていただいたのもう忘れてんぞ!姫さんは相変わらずだな!」
「ふむ……急ぎ過ぎて転ばなければいいのだが」
杏寿郎の嫌な予感はひっそり当たっており、廊下で足を滑らせ転んだ更紗はあまね様を心底驚かせていた。