第20章 柱稽古とお館様
「月神様、お顔は大丈夫ですか?」
杏寿郎の嫌な予感を見事体現させて見せた更紗は、転んだ影響でしこたま額を打ち付け、小さなコブを作っていた。
「大丈夫です。あまね様、改めまして月神更紗と申します。このようにそそっかしい……やら無防備やらと言われる未熟者ですが、どうぞよろしくお願いいたします」
鬼殺隊に入り1年強過ぎたのだが、更紗はお館様の奥方であるあまね様に会うのは今日が初めてである。
初めてなのに泣いてぐしゃぐしゃな顔や転んでコブを作った顔しか見せていないが、白樺の精のような儚く美しいあまね様は更紗に優しく微笑み返してくれた。
「ご丁寧にありがとうございます。私は産屋敷あまねと申します。月神様のお話しはお館様や柱の皆様から聞き及んでおりましたので、初めてお会いしたとは思えません。さぁ、こちらのお部屋にご用意しております」
促されて入った部屋は今までお邪魔させてもらった産屋敷邸の部屋の中で1番小さいながらも、1人だと寂しく感じる大きさがある。
「皆さんからあまね様のお耳に入ったお話しを知りたいような知るのが怖いようなです……すぐに着替えてまいりますので、お館様のそばにいて差し上げてください」
コロコロと表情を変える更紗に再び笑みを返し、あまね様は首を左右に振った。