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月夜の軌跡【鬼滅の刃】

第20章 柱稽古とお館様


「もちろんでございます。今まで皆様に守っていただいた御恩に報いるべく、身命を賭して鬼殺隊に尽くす所存です。人としても剣士としても未熟ですが、賜った任……謹んでお受け致します」

きちんと伝えたい言葉は伝えきった。
だがもう堪えるのも限界に達してしまった。
柱に任命して貰えた喜び、杏寿郎をはじめとした柱や天元への感謝、そして目の前で苦しげに浅い呼吸を繰り返すお館様への想い。

全てが更紗の胸の中でぐちゃぐちゃに入り乱れ、ぎゅっと瞑った瞳からポロポロと涙が畳へと零れ落ちていく。

「泣かなくて大丈夫だよ。君の皆への想いはしっかり届いているし、私への気持ちも届いているから。すまないね、こんな体だから背中をさすってやることすら出来ないんだ……杏寿郎、更紗を落ち着かせてやってくれるかな?」

お館様の視線の先には更紗を優しげな瞳で見つめる杏寿郎の姿があった。

「はい」

短い返答を返し、杏寿郎は小さく蹲り肩を震わせている更紗の隣りへと場所を移し、そっと背中を撫でてやった。

「ゆっくり呼吸をしなさい。焦る必要はない、少しずつでいいので気持ちを落ち着けるんだ」

穏やかな声に従い更紗は胸の中の感情を吐き出すように、ゆっくりと何度も呼吸を繰り返し、乱れていた胸の内を鎮めていく。
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