第20章 柱稽古とお館様
「皆、待たせて悪かったね。どうも体が言うことをきかないんだ」
きっと立っているのもやっとなはずだ。
それどころか起き上がることすらままならない状態に違いないはずなのに、こうして全員の前へ姿を現してくれて嬉しい反面、どうしても痛々しい姿に胸が軋んだ。
あまね様に支えられて腰を下ろす動作さえ、思わず眉をしかめたくなるほどである。
「心配してくれてありがとう。今日はね、皆や皆が守り育ててくれた新たに柱となる更紗に一目会いたくて、邪魔をさせてもらったんだ。更紗、私の前に来てくれるかい?」
顔も包帯で隠されていてはっきりとした表情は見えないが、目元は柔らかく細められ、笑みを向けてくれているのだと分かった。
その表情で更紗の胸の中は様々な感情が入り乱れ、先ほど無理矢理押し込んだ涙がじわじわと滲んでくる。
「は……い」
それでも必死に涙をこらえ震えそうになる足を叱責しながら、どうにかお館様の前へと歩み寄り、その場に座してこうべを垂れることが出来た。
「君ならここまで登りつめてくれると信じていたよ。優しく素直で誰かのために涙を流せる君は、この場の誰もが認めた柱だ。鬼に苦しめられている人々を救い、後輩たちを導いてやってくれるかな?」
病状に伏せっていても、穏やかで誰もが思わず聞き入ってしまう声は現在だった。