第20章 柱稽古とお館様
正座をしたまま畳に両手をついて頭を下げる更紗を中心として、部屋の中がシンと静まり返った。
(初めて皆さんとお会いした時も、この場所でこの空気を漂わせた記憶が……どうしましょう。前と同じならば呆然としている方が多数いらっしゃるはず……)
以前は杏寿郎に促されて顔を上げたが、いつまでも助けてもらうわけにはいかないと、思い切って勢いよく顔を上げると……呆然としている柱は1人もおらず、皆が口元をウニウニ動かし肩を震わせている……杏寿郎を除いて。
「皆さん、もしかして笑いを堪えていらっしゃいますか?」
笑いを堪えていることが本人にバレているなら仕方ないというように、1名を除いて吹き出した。
笑われることをした記憶のない更紗が唯一笑っていない杏寿郎を見つめて首を傾げると、大きな手で頬を撫でられた。
「君の行動に笑っていると言うより、以前とあまりにも似た光景が思い出されて笑っているのだと思うぞ?更紗も既視感を覚えたのではないか?」
「はい……なんだか懐かしくも恥ずかしい記憶が蘇りました。そんな記憶がまた1つ刻み込まれたのですが……でも、笑顔になってくださったなら、それはそれでいいかなぁ……なんて思います」