第20章 柱稽古とお館様
呆れる天元を気にもとめず撫で続ける様子を見ていると、継子でなくなり更紗が柱となっても、杏寿郎は頭を撫でる行為を続けるに違いない。
普通の女子なら子供扱いするなと怒るかもしれないが、更紗はこうした触れ合いが皆無な状況で生きてきたので、むしろ喜んでいるフシがあるので丁度いいのだろう。
「猫かよ……姫さんから猫さんに……どっちにしてもそれっぽいから問題ねぇけど」
「猫はどうなんだァ?もはや人間じゃなくなってんじゃねぇか」
締まりのない会話をしていると、そこへ実弥をはじめ柱の面々が部屋に到着した。
やはり柱が揃い踏みすると緩んでいた空気が引き締まり、更紗にも緊張感が戻ってくる。
「皆様、お久しぶりです。稽古の時は大変お世話になりました。しのぶさん、これからの研究の際はよろしくお願い致します」
居住まいを正した更紗からはふにゃふにゃだった表情が抜け落ち、目の前にいる柱や元柱を敬う引き締まった表情となった。
「遅くなりましたが、私を認めてくださりありがとうございます。柱の1人としての自覚を持ちその名に恥じぬよう心掛けますが、至らない点がございましたらご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします」