第20章 柱稽古とお館様
せめてもの償いとして更紗は朝の疲れを剣士たちが癒しやすいよう、精のつく食事を作り風呂まで沸かしておいた。
いつもは夜だけだが、今日は更紗の罪悪感から特別にお昼から風呂場が解放された。
「更紗は働き者だな!今日は何もせずに休んでいていいのだぞ?」
「いえ!じっとしているのは落ち着きませんので。動いていた方が……色々気が紛れるといいますか」
顔を青くしている理由は杏寿郎には分からなかったが、赤くしている理由には察しが付き、危うく笑いそうになるのを必死に堪えた。
「こうして食事や風呂の準備をしてくれているのはとても助かる。剣士たちも喜んで風呂に向かっていったしな。俺も後から有難く浸からせてもらう」
深く追求されずホッと息をついて頷くと、突然頬に柔らかく温かい感覚がもたらされた。
何……と確認する前に杏寿郎は笑いながら更紗を胸の中に誘っていく。
「あまり気負わなくていい。俺はこうして更紗を抱き締めるだけでも十分幸せだ。明日の朝は早いので、何事も程々にしておこう」
全てお見通しの杏寿郎の胸の中で、更紗はやはり顔を赤くしながら小さくもう一度頷いた。