第20章 柱稽古とお館様
楽しく穏やかな時間はすぐに過ぎ去ってしまう。
剣士たちの分も朝餉を拵えてくれた千寿郎と槇寿郎は、邪魔になってはいけないからと稽古が始まるまでに煉獄家へと帰ってしまった。
隣町なのですぐに会おうと思えば会えるのだが、時期が時期なのでやはり別れるのは更紗の胸をチクリと痛ませた。
かと言っていつまでも落ち込んでいるわけにはいかないのも事実で……まず剣士たちの稽古の具合の確認だ。
自分の一言で色々な惨事を生み出してしまった。
その1つは自分自身に返ってきたが、あと1つの被害は剣士たちに向かっている。
「稽古内容……大丈夫でしょうか?私のせいで」
道場の中から見えないように外壁にへばりつき、耳をそばだてて杏寿郎の言葉を待っていると、ついに内容が発表された。
「おはよう、皆!今日の稽古内容だが、いつも通りのものを行う」
いつも通り。
その言葉が更紗の気持ちを軽くするが、それは一瞬のことだった。
「それに加えて稽古が終わった者から順番に俺との打ち合いだ!回数は腕が上がらなくなるまでなので、人それぞれとなる!」
更紗はその場で崩れ落ちた。
「皆さん……すみません。大きな声では言えませんが……私が原因なのです……私も夜どうするのか考えなくてはいけませんし」
剣士たちの阿鼻叫喚を聞きながら、自分の心配も同時に行った。