第20章 柱稽古とお館様
居間へ戻ると更紗が心配そうに杏寿郎を見つめてきたが、何でもないと頭を撫でてやると安心したのか、あっと言う間に穏やかな笑顔となった。
「さて、俺と千寿郎がここへ赴いたのは、君が柱になると要から知らせがあったからだ。なるかもしれんとは聞いていたのだが、君が正式にその話を受けたと昨日の夜に知らされ、こうして……赴いた」
夜が明ける前のこんな早朝にだ。
それでも更紗は自分のために来てくれたことが嬉しいのだろう、両手を胸の前で合わせて満面の笑みを槇寿郎と千寿郎に向けた。
「ありがとうございます!未だに信じ難いですが、柱になれるのもお義父さまや千寿郎君が、どこぞの娘かも分からない私を嫌な顔一つせず、迎え入れてくださったお陰様です!あとは杏寿郎君が辛抱強く導き育ててくださったからです」
長いようで短かった今までを思い返すと涙腺が緩みそうになったが、もう泣いたあとであり笑顔で溢れたこの場の空気を壊したくなく、笑顔でいることにした。
「初めは驚きましたが、あっと言う間に更紗さんがいるのが当たり前になりましたよね!家の中がパッと明るくなって、つい今でも更紗さんの姿を探しちゃうくらいですもん!……父上も」