第20章 柱稽古とお館様
たった少し杏寿郎と話しただけで笑顔に戻った更紗に2人は驚きつつも、いつも通りに戻ったことに胸を撫で下ろした。
「いや、俺こそ気を遣ってやれず悪かった。千寿郎、更紗、俺は杏寿郎と少し話があるのでここで待っていてくれ。杏寿郎、空いてる部屋に案内してくれ」
更紗は何の話なのか検討もつかないが、杏寿郎や千寿郎は槇寿郎が何を話そうとしているのか感じ取り、苦笑いをうかべた。
「畏まりました。2人とも、すぐに戻るので菓子でも食べて待っていてくれ。父上、こちらです」
2人が頷いたのを確認すると、杏寿郎は剣士たちが使用していない部屋へと槇寿郎を案内し、向かい合って腰を下ろした。
「父上、お話しとは?」
「聞かずとも先ほどの流れで予想は出来ているだろ?きちんと……配慮はしているのだろうな?今身籠らせるわけにはいかないはずだ。それに……あの子の能力のこともある。これから先のこと、しっかり考えているのか?」
やはり……と心の中で零し、杏寿郎は居住まいを正して槇寿郎の目をしっかりと見据えた。
「祝言を上げるまでそうならないよう配慮しますので、ご心配には及びません。その後はまだ更紗ときちんと話してはいませんが、能力が第一子に引き継がれる以上、この地を離れる覚悟を決めております」