第20章 柱稽古とお館様
居間へ2人を案内し、杏寿郎が機嫌良く台所で茶を入れるために湯を沸かしていると、そこへ全ての準備を整え終えた更紗が急ぎ足で飛び込んで来た。
「お待たせ致しました!すみません、交代しますので杏寿郎君も準備を整えてきてください。今度は私が杏寿郎君をお待ちしております」
ニコリと笑う更紗が眩しく、杏寿郎は火の前から離れて綺麗に身なりを整えた更紗を抱き寄せた。
「更紗の着物姿は久方ぶりだな。どんな姿も愛らしいが、やはり女子らしい格好はそそられるものがある」
布団の中での余韻を残しているのか、杏寿郎の表情は更紗がドキリとするほどに艶やかで、綺麗な炎のような瞳に吸い込まれそうになってしまう。
「あ……ぅ……その、杏寿郎君はいつも私を……魅了してしまいます。お、お……襲ってしまいたくなるくらいです!」
思いもしなかった返答に杏寿郎は目を見開き驚くが、満面の笑みとなり更に強く抱き寄せ、首元に顔を埋めた。
「そうか!君を魅了出来ているならば何よりだ。いつ襲ってもらえるのだろうか?」
「ふ……え?!いつと言われますと……あの、今日?」
半分は恥ずかしがる更紗見たさに冗談で言ったのだが……真面目に答えられてしまった。