第20章 柱稽古とお館様
「巣に囲っていても守れぬことが多かったがな。だが、温かく穏やかな場所だったと更紗が思ってくれていたのなら……嬉しい限りだ」
硝子細工を扱うように更紗の体を抱き寄せ、外の世界で初めて1人立ちする小さな背中を励ます意味も込めてポンポンと叩く。
「鬼殺隊での立場は師弟から同等のものへと変わるが、日常は変わらない。君への想いもずっと変わることはない。俺も更紗が継子でなくなることは寂しく思うが、肩を並べて戦いに挑めることが何より嬉しい。涙することばかりでもないだろう?」
「はい……はい!師範の背に守られるだけでなく、背を守れるようになれたことはすごく嬉しいです。お父さんからの再三の言いつけも守ることが出来ましたね」
ようやく笑った更紗に安堵のため息を小さく零し、顔が見れる位置まで僅かに体を離した。
「そうだな!俺からも再三言っているが、柱になったからと言って無謀な無茶は引き続き行わないように!更紗の治癒は失うわけにはいかないものであり、君の存在は俺にとってかけがえのないものだからな!」
「……善処します!ですが、師範もそれは同じですよ?師範の力は失うわけにはいかないもので、杏寿郎君の存在は私の生きる意味なのですから」
自分で言いながら恥ずかしげに頬を染めた更紗に柔らかな笑みを向け、杏寿郎は稽古で疲れ切った少女を布団へと誘っていった。