第20章 柱稽古とお館様
静かな部屋では高めの更紗の声がよく響き、杏寿郎の耳をほどよく刺激して気持ちを引き締めさせた。
「繋がる。更紗、大切な話をするのでしっかり聞き考え答えてくれ。先に言っておくが無理強いするつもりはない」
いつになく真剣で見つめられた瞳から目をそらすことが憚られるが、そんな杏寿郎の様子が自分の憶測は間違っていないと更紗を確信させていく。
「かしこまりました。心の準備はとうの昔に出来ております……お聞かせください」
「前置きは捨て置く。更紗、俺は君には柱になってほしいと思っている」
1度言葉を切り更紗の様子を伺うと、天元の言った通り瞳が揺れて動揺しているのが見て取れた。
だが取り乱してはおらず、先の言葉を聞こうと口を開かずじっと杏寿郎を見つめ返している。
強くなったものだと笑みを浮かべそうになるが、空気を緩めるわけにはいかないので、杏寿郎は笑みを奥へとしまい込んだ。
「柱の皆には君の力量を実際に見た上で判断してくれと伝えた。そして君は柱稽古には参加していない胡蝶を含め、全員から認められた。もちろんお館様の承諾も得ている。今日この場で返事が欲しい……俺たちに残された時間はあまりないのでな」