第20章 柱稽古とお館様
生温かかったり驚愕だったりの視線が向けられていたのは初めだけで、更紗が頬を赤く染めながら丼鉢に握り飯と茶を入れてお茶漬けを作り出すと、現金なもので剣士たちはそちらに関心を持っていかれて次々と2人が持ってきた丼鉢が消えていった。
その丼鉢が消える早さ以上に大量に食事を必要とする更紗のお茶漬けを食べる早さに、柱2人以外が目を剥いたのは言うまでもない。
腹が満たされた更紗は無事に昼からの稽古に挑むことができ、現在は少し先に向かった剣士たちの後を追って、走り込み会場である比較的なだらかな山の麓へ到着したところだ。
「この稽古で柱稽古は最後となる!今君は1番最後尾だが、帰ってくる時は誰よりも早く帰って来い。それが出来れば合格だ」
「……らしいぞ」
杏寿郎の厳しさは今に始まったことではないので驚きもしなかったが、何だったら更紗よりも義勇の方が顔を引きつらせている。
「今からだと結構ギリギリですね。でも出来ないことはないと思います。では師範、冨岡様、直ぐに戻りますので暫くお待ちください」
「あぁ、1番に顔を見れることを期待して待っている」
師弟2人は出来ないと思ってはない様子で、更紗は笑顔を残して疲れているはずの体を元気に動かし山の中へと消えていった。