第20章 柱稽古とお館様
義勇の圭太への返答とその後の絶叫は丼鉢を取りに行った2人の耳にも届いていた。
ただでさえ人前で抱き寄せられほんのりと頬が赤く染まっていたのに、短時間の居間でのやり取りが更紗の全身を熱くさせ、恥ずかしさから瞳が潤む。
そんな顔を見られまいと先ほどまでの稽古で酷使され動きが鈍いはずの腕を動かし両手で顔を隠すが、真っ赤に染まった顔は既に杏寿郎にしっかりと確認されていた。
「そのような表情のままだと、君を居間に戻してやれなくなるのだが」
恥ずかしがり屋なところはずっと変わらない。
それが杏寿郎にとって、なんとも愛しく変わって欲しくないところである。
そんな事とはつゆ知らず更紗は手で顔を隠したまま小さな声を絞り出した。
「だって……なんだか恥ずかしい」
「俺が許嫁だと恥ずかしいか?」
耳に届いた声は少し悲しげで、更紗は慌てて顔から手を外して杏寿郎を潤んだ瞳で見上げる。
「違います!杏寿郎君が私を選んで下さったことが嬉しくて幸せで……それを再認識するとこそばゆくて、でも恥ずかしいと言いますか……それに杏寿郎君は私には勿体ないくらい素敵な方です!素敵過ぎて毎日好きな気持ちが増しているほどです!」