第20章 柱稽古とお館様
更紗は立ち止まって振り返り、杏寿郎の様子をじっと観察した。
「お手をお借りして不合格……なんてことはございませんよね?」
「あるわけないだろう!俺もそこまで鬼ではないからな!休憩時間くらいゆっくりしていなさい。して、君は台所に何を取りに行こうとしていたんだ?」
辛すぎる稽古内容に少しだけ……ほんの少しだけ疑心暗鬼になっていた更紗であったが、純粋な杏寿郎の心遣いにホッと胸をなで下ろした。
「ありがとうございます。ですが流石に師範に任せ切りには出来ませんので、お手伝いをお願い致します。お家の中にあるだけ全ての丼鉢をここに運びたいのです」
「丼鉢?ふむ、何に使うのかは分からんが……では取りに向かおうか。おいで」
何だかんだでつい甘やかしてしまう杏寿郎は、義勇や剣士の目も全く気にせず更紗の体を支えるように肩を抱き寄せ、台所へと意気揚々と向かっていった。
「……冨岡さん、ずっと気になってたんですが聞くに聞けなくて……煉獄さんは月神と交際してるんですか?」
圭太の質問はこの場の剣士全員が気になるようで、食べる手を止めて義勇の返事を今か今かと待ちわびている。
「月神は煉獄の許嫁だと聞いている」
想像より一歩進んでいた関係に絶叫が響き渡った。