第20章 柱稽古とお館様
「それなら安心しました。これで私の心のつかえはなくなり……ました?……実はあと1つあるのですが、それは杏寿郎君から合格をいただければ教えて貰えると無一郎さんからお聞きしましたので、今は質問しないでおきます。気になりますが」
少し俯いて体をモジモジさせているところを見ると、今すぐにでも杏寿郎に尋ねたいのだろう。
それがどんな内容であっても、秘密にされればされるほど気になるのは人間の性なので仕方がない。
杏寿郎もそれを分かっているが今聞かれても答えるつもりはなかったので、ニコッとモジモジ更紗の頭の上に笑顔で手を置いた。
「明日に教えてやるから心配するな!だが、明日に教えるという意味…… 更紗なら何を意味するか分かるはずだ!」
モジモジは消え去った。
今は目を見開いて背筋を伸ばし、ダラダラと冷や汗を流している。
「杏寿郎君の稽古を明日1日で合格をいただけなければ、教えてもらえないばかりか話自体がなくなる……ということですね?」
「さすが良く分かっているではないか!それでこそ俺の継子だ!更紗ならば必ずやり遂げられる!さぁ、明日に備えてそろそろ休むぞ!」
有無を言わさず杏寿郎は更紗を布団へ押し込め、自身もその隣りに身を滑り込ませた。
……柱の中で1番厳しいのは義勇ではなく、己の師範である杏寿郎だった。