第20章 柱稽古とお館様
「伝えてやれてなくてすまない。だが心配ないぞ!禰豆子少女は鱗滝殿のところに退避させた!覚えているか?禰豆子少女を守るために命を懸けておられる元水柱……竈門少年や冨岡の育手を担っていた御方だ」
もちろん覚えている。
鱗滝が義勇の育手だったことを更紗は今初めて知ったが、それで全てに合点がいった。
以前に炭治郎から義勇に育手を紹介してもらったと聞いており、それが鱗滝ならば禰豆子に命を預けた理由も理解出来る。
杏寿郎と更紗との間に師弟の信頼関係があるように、鱗滝たちにも揺るがない信頼関係が成立していたのだ。
「よく覚えています。鱗滝様の元へ禰豆子さんを預けられたのは、少しでも鬼から遠ざけるためですか?」
「そうだ。鬼が動き出した以上、陽の光を克服した禰豆子少女の身にも危険が迫っているからな。狭霧山に居を構えている鱗滝殿のそばにいる方がここにいるより安全だ……連れ出す時は泣かれてしまって心を痛めたのだが、鱗滝殿の顔を見た途端に笑顔になったので寂しい思いはしていないはずだ」
泣いて杏寿郎にしがみつく禰豆子を想像すると、なんだか親子のようで微笑ましいが……その時の杏寿郎の心痛は計り知れない。