第20章 柱稽古とお館様
一気に賑やかになった台所で更紗は圭太に意識を向ければいいのか、それとも剣士たちに意識を向ければいいのか分からなくなり石のように固まってしまった。
「早く行こう!ここにいたら誰がいつ口を……そうなる前に煉獄さんの所に送り届ける」
「何かとんでもないことが起きたのですか?それとも……仏と思しき何とやらが関係しているのでしょうか?」
危ない。
あと少しで神久夜が必死に食い止めた言葉に行き着いてしまう。
「あ、それなら耳にしたことある!月神さんのことを」
「あぁーー!月神、もう日が傾いてきてる!遅れて手伝いに来た奴らのこと気にする前に見学させてもらいに行こ!ほら、先に玄関に行ってて!俺、手洗ってからすぐ追い掛けるから」
そう言って圭太は戸惑う更紗の背をグイグイと押し、台所から追い出す。
訳の分からないまま追い出されてしまった更紗は1人項垂れながら、言われた通りに玄関へ足を向けた。
「私、皆さんにどんな風に呼ばれているのでしょう?想像通りでなければいいな……」
どうやら無一郎邸から何度も繰り返し見聞きした情報で、粗方なにを言われているのか予測が立っているようである。
「仏と思しき阿修羅……」
予測は当たっていた。