第20章 柱稽古とお館様
剣士たちが思い思いの時間を過ごし始めた頃には、すでに更紗は杏寿郎と義勇を屋敷から送り出して台所で夕餉の準備に取り掛かっていた。
初めこそ1人で下拵えを行っていたのだが、1人の剣士……仲良くしてくれている圭太が手伝い始めたことにより、1人また1人と思い思いの時間を過ごしているはずの剣士たちが集まり、今では数個の櫃の周りに数人が腰を下ろして握り飯をこさえている。
「先ほどは圭太さんがいらっしゃることに気付かず申し訳ございませんでした。まさかここでお会い出来るとは思ってもみなかったもので……」
そんな中で更紗の隣りに立って味噌汁をかき混ぜている圭太へ、他の剣士と同様握り飯をこさえながら視線を向けて気が付かなかった事に対する謝罪を改めて行った。
「いや、これだけ剣士がいれば気付かないだろ。てか何でこいつらもここにいんの?風呂入って部屋で寝るとか言ってたくせに」
ジトッと背後にいる剣士たちを見回してため息をついた。
「え?そうなのですか?皆さん、お疲れでしたら休んでいてください。明日の稽古に響いてもいけませんし……」
「月神が気にする必要全くないって。ここで稽古してるの男ばっかりだから少しでも月神と話したいだけだろうし。それより行かなくていいのか?柱同士の手合わせ、見に行くんだろ?」