第20章 柱稽古とお館様
それぞれの好物の名前が出てきたので2人の瞳がキラキラと輝くもそれは一瞬のことで、すぐ2人は心配げに眉をひそめた。
「君も稽古を終えてここまで移動してきたんだ。疲れているだろうから簡単なもので構わない。それに夕餉なら俺も手伝うので冨岡との手合わせ後に一緒に作ろう」
「俺も手伝う」
普段なら更紗にとってすごく魅力的な提案だが、今から柱同士で稽古をする杏寿郎と義勇に手伝わせるなど出来るはずもない。
ましてや義勇は客人である。
更紗たち一般剣士が柱稽古をしてもらうために屋敷へ邪魔させてもらうのとは訳が違う。
「ご心配いただき凄く嬉しく思います。ですが今日は私にお任せ下さい!お2人には手合わせに全力を注いでいただかなくてはいけませんから!鬼殺隊の要である柱を私に支えさせてください」
朗らかに笑う更紗を前に、2人の心配げにひそめられていた眉が解れて穏やかな笑顔となった。
それが了承の合図だと受け取った更紗は、両腕を上にあげ大きく伸びをしてから体をクルリと反転させ、2人へと向き直って笑顔のまま交互に見つめた。
「まずはお茶を用意してまいります!お2人は居間でお待ちくださいね」
先に2人へ手伝わないように釘を刺して更紗は玄関へと走り去っていく。
「……押しが強い」
「あぁ!たまに空回りしてるが、その姿も愛らしいので俺は満足だ!」
サラリと惚気を口にする杏寿郎を見る義勇の目は心做しか生温かかった。