第20章 柱稽古とお館様
あまりに稽古に熱が入り時間の感覚がなくなっていたのか、杏寿郎は外に顔を出して太陽の位置を確認し、ハッとした表情で剣士たちへと向き直った。
「皆、お疲れだったな!今日の稽古はこれでお終いだ。これからの時間は好きに過ごしてくれて構わない。だが日暮れまでにはこの屋敷に戻ること、いいな?」
労りの言葉をもらった剣士たちは永遠と続く稽古から解放された喜びから元気を取り戻し、杏寿郎へといい返事を返して一斉に頭を下げる。
杏寿郎の稽古も他の柱と同様厳しいに違いないが、今の表情を見る限りいい関係を築いているのだろう、全員が晴れやかな顔で杏寿郎もまた笑顔だ。
「待たせたな、更紗、冨岡。少し茶を飲んでから稽古場に赴くとしよう」
剣士たちの表情に満足気に頷いた杏寿郎は2人へと歩み寄り、それぞれの背に手を当て屋敷へと促してくれる。
その手の温かさが少し懐かしくて嬉しさが込み上げた更紗は、稽古と移動で疲れていたはずなのに剣士たちと同じくみるみる元気になった。
「はい!でも私は夕餉の支度を皆さんと一緒にしてから見学に向かわせていただきます。今日の夕餉はさつまいものお味噌汁と鮭大根ですよ!」