第20章 柱稽古とお館様
「冨岡様、どちらへ向かっているのですか?雨戸を閉めてくださったので私はあの部屋で全く問題ありませんよ」
……反応が返ってこない。
何か考えているのだろうが言葉として出てこないうえに、更紗からは義勇の背中しか見えないので表情から読み取ることも出来ず……手を引かれるまま後をついて行くしか選択肢はなかった。
そのままの状態で辿り着いたのは義勇の自室と思われる部屋。
「そこに座っていてくれ」
ようやく言葉を発したかと思えばやはり簡素なものだけ。
しかし今まで意味のない指示を出すことはなかったので、戸惑いながらも指をさされた付近に腰を落ち着けるが……義勇が手にした物に肩をビクつかせた。
「手の中の物はまだ感触があるのか?」
「はい……ヌメヌメしてて気持ち悪いです。えっと……それで何を?」
「手(の中で再生する前に中の物)を斬る」
更紗は反射的に手を後ろに隠してしまった。
手を斬られるくらいならヌメヌメを味わいながら夜を明かした方がマシだ……と。
「何をしている?そのままだとろくに眠れないだろ」
「いえ……でも手がなくなるよりこのままの方が有難いなぁ……と思うのですが」