第20章 柱稽古とお館様
その手拭いをヌルッとした感触の残る手に巻き付け、目玉が再生したとしても周りの状況を与えてしまわないようにすると襖を僅かに開けた。
「お疲れなのにすみません……冨岡様を呼んできていただけますか?私は穴を塞いで新たな目が侵入しないように」
「その必要はない。何があった?」
極力音を出さないようにしていたが、音に反応したのか不穏な空気に反応したのか……義勇が浴衣姿で襖を開けて部屋の中へ入ってきた。
「鬼の目が現れました。それで……あの、握り潰したのですが、その際に障子を破いてしまいました。申し訳ございません」
「……握り潰したのか?」
義勇からすれば障子など大した問題ではない。
それよりも目玉を握り潰し項垂れる更紗の行動に目を剥いた。
「はい、鬼の一部だと思いますので再生するやもと握ったままなのですが……どうしましょう?太陽が昇るまでこうしておきましょうか?」
手拭いが幾重にも巻き付けられた右手を差し出された義勇は一瞬逡巡し、無言で穴の空いた障子を開けて外の様子を確認した。
「雨戸を閉めてくる、月神はここで待っていろ」
そう言って義勇は更紗の返事を待つことなく縁側へ身を滑らせ、庭に面した縁側全てを隠すように雨戸を閉めてから部屋へ戻り、更紗の手首を掴んで廊下を進んでいく。