第20章 柱稽古とお館様
それを感じ取った義勇も木刀を構え直し真っ直ぐに更紗を見据える。
「痣の出ていない俺に気圧されるな。今の月神なら俺の首元に木刀を突き付けられるはずだ。俺を……煉獄を失望させるな!」
遠慮や恐怖が更紗の頭から吹き飛んだ。
「はい!申し訳ございませんでした!」
更紗を焚き付けるために言った言葉に素直に謝罪されてしまった義勇は肩をガクリと落とすが、たまに柱や剣士が話している更紗の様子そのままだったので妙にしっくりきた。
1人そんなことに思考を巡らせていると、先ほどとは比べ物にならない勢いで更紗が詰め寄って来る。
義勇は瞬時に思考を切り替え、すぐそばまで迫り寄る更紗の脚捌きをしっかり確認し、問題ないことを確認して迎え撃つ為に木刀を横に薙ごうと左側へ移動させたが……
「何?!」
こともあろうか更紗は木刀を天井へと放り投げ生身で向かってきた。
「いったい何を……」
何をしようとしているのか理解した時には既に更紗は床を踏み切り、義勇の頭上で体を捻りながら飛び越えているところだった。
「なるほど、体術も得意だったな」