第20章 柱稽古とお館様
(私も怖いです!今までの柱稽古の中で1番厳しいです!)
頬を冷や汗が伝い、ずっと心臓はどくどくと激しく打ち続け今にも胸から飛び出してしまいそうである。
「気が逸れているぞ!聞かなかったか?!試されていると」
怯えを滲ませていた更紗の表情が義勇の叱責で一気に引き締まり、1度距離をとって木刀を構え直した。
「失念しておりました。もう一度お願いします!」
この稽古が終われば残すは杏寿郎の稽古のみとなる。
それを知っているからこそ、敢えて厳しくしていたのだ。
杏寿郎が何かを話すということは、その出どころは間違いなく杏寿郎である。
その杏寿郎が他の柱を総動員しなければならないほどの何かなど、いくら更紗が世間知らずでそそっかしい女子であっても想像はつく。
(その理由がはっきりと分からない以上、安易に受けたくないし受けられない。こんなにも柱の方々と実力差が顕著ならば尚更です。でも……課せられたもので師範を失望させたくない)
数日前は首筋の痣だけが常に顕現しつつあったが、今の義勇の言葉で頬の痣が肌に刻み込まれるほど濃く浮かび上がった。
鮮やかな橙の炎を模した頬の痣は更紗の身体能力を更に上昇させていく。