第20章 柱稽古とお館様
「明日のお昼にはここを出立して、杏寿郎君の元へ一緒に向かう……ですか?」
「あぁ、明日は煉獄のところで手合わせがある」
つまるところ明日の昼までに稽古を突破しなくては数日間この屋敷を義勇が離れるので、時間に限りのある更紗が待ちぼうけを食らってしまうということだろう。
それは是が非でも避けたい事態だ。
「ぜひお供させて頂きたく存じます。では改めまして……よろしくお願いいたします」
「いつでも来い」
静かな義勇の言葉を合図に稽古が始まった。
始まったのだが……普段の物静かな雰囲気からは想像出来ないほどに厳しかった。
「そちらに下げるな」
「違う」
などなど短い言葉ながら指摘は容赦なく続く。
たまに足の場所を矯正させる為に義勇の木刀が太腿に向けられるが、今のところ更紗は木刀が接触する前に足を動かしているので難を逃れている。
と言うより内出血で済む勢いではないので、何がなんでも避けなければ2、3発で足が動かなくなってしまう……と確信しているからだ。
そして今までまともに稽古が出来なかった剣士たちは2人の稽古を実際に目の当たりにして、身を寄せ合い道場の隅っこでガタガタ震えている。