第20章 柱稽古とお館様
「えっと……今日の稽古は終わってしまいましたか?」
「終わってない」
即答だった。
よく見ると義勇自身、この状況に戸惑っているのか眉が僅かに寄っている。
「確か冨岡様の稽古は脚捌き学ぶものでしたよね?私たち剣士は冨岡様に手合わせを願えばよろしいのでしょうか?」
「さっきからここの剣士たちにもそう言っている」
だが剣士たちは更紗に視線を向けて首を小さく何度も何度も左右に振っている。
(冨岡様と上手く歯車が合わなかったのですね……冨岡様は伝えたつもりだったけど、簡潔すぎる冨岡様の言葉の真意を測りかねた……といったところでしょうか?)
とりあえずこの微妙な空気を何とかしなくては稽古が進まないと感じた更紗は、神久夜を床に置いた自分の荷物の上に座らせ木刀を腰から抜き取った。
「冨岡様、脚捌きがおかしければ遠慮なくご指摘下さいませ!言葉、行動のどちらでも構いませんので」
「……分かった。その前に月神、お前は明日の昼までにここでの稽古を終わらせろ。共に向かうぞ」
(どこへでしょう?!うーん、今の私の状況も鑑みて……こうかな?)
あまりにも端的な言葉に悩みながら、どうにか捻り出した解釈を口にしてみる。