第20章 柱稽古とお館様
「更紗ちゃん、頑張るのはいいけどのめり込み過ぎ。俺がここに来て四半刻は経過してるよ?少し休憩しなきゃ」
ぼーっとしていた更紗の意識が無一郎に頭をポンポンと撫でられたことにより一気に覚醒していった。
「そんなにもですか?!あ、申し訳ございません!これをする度にどなたかをお待たせしてしまうんです……もしかして、ずっと待たれていましたか?」
無一郎は更紗の頭から手を離し首を左右に振った。
「ううん。俺も試してたからね。一応君の言う透明な世界は理解出来たんだけど、俺はそこまでのめり込むことはなかったよ。思うんだけど……戦闘で活用したいなら目を開けて動きながら見えるようになった方がいいんじゃないかな?」
仰る通り。
戦闘中に四半刻も意識を飛ばしていたら命がいくつあっても足りはしない。
しかし1度は戦闘中に見ることが出来たのだ、不可能な話ではないだろう。
「そうですよね……それで、その……無一郎さんは動きながら」
「うん、出来たよ」
さすが天才と呼ばれる剣士だ。
更紗がのんびり世界に浸っている間に全てを成し遂げてしまっていた。
「もうですか?!もしかして他の柱の皆さんも出来ているのでしょうか?」