第20章 柱稽古とお館様
夜になり再び眠りについた神久夜を部屋の布団で寝かせてやると、更紗は昼間に稽古をした道場へと足を運んだ。
無一郎の屋敷は電気が通っているらしく、窓を締め切った夜であっても昼間のように明るい。
中を覗いても無一郎の姿は見当たらないので、更紗が来ることを見越して明かりを付けていてくれたのだろう。
しかもご丁寧に座布団を2枚用意してくれている。
「ご好意を無駄には出来ません!早速悲鳴嶼様の所で身に付けた集中力を高める方法で……いざ透明な世界へ!」
気合十分、更紗は用意されていた座布団の上に腰を下ろし、集中力を高めるために瞼を閉じて深呼吸をする。
過去を遡り今に至るまで大切な人の姿が次々と頭の中に浮かぶ。
笑っていたり痛みを堪えていたりその表情は様々だが、どの人も間違いなく更紗にとってかけがえのない人たちだ。
(なんだかフワフワしていて気持ちいい。音も聞こえない静かな空間にいるみたい)
閉じていた瞼を開け視線を動かさずにそのまま前を見据えると、皮膚が透けた人が目の前に佇んでいる。
(あ、見えた。この動きは……私の頭に触れようとしている?私の……頭?!)