第20章 柱稽古とお館様
「うん、もちろんだよ!あんまり無理はしないようにね!」
「はい、では一先ず失礼致します」
てくてくとしっかりした足取りで打ち込み台へ向かう更紗の後ろ姿を見送ると、無一郎は隅で打ち合いを見守っていた剣士たちへと向き直った。
「君たちさぁ、いつまで突っ立ってるの?打ち込み台に行くなり俺に向かってくるなり何でしないのかなぁ?来ないならこっちから行くよ。君たちがいくら怪我をしようと更紗ちゃんが永遠と治してくれるから、回復するまで待ってあげる必要なくなったしね!」
剣士たちの悲鳴が道場内に響き渡るのを冷や汗を流しながら聞いている更紗だが、稽古を止めるわけにはいかず、また自分の能力向上にも務めないといけないので、心を鬼にして打ち込み台に向かいながら剣士たちの治癒を続けた。
途中
「これが噂の仏と思しき阿……」
と剣士の1人から聞こえたような気がしたが、言葉の途中で無一郎から全力で叩きのめされたので先は聞き取れなかった。
更紗が首を傾げながら打ち込み台に向かっている姿を確認した無一郎は、とんでもない言葉を吐きかけた剣士の肩に手を当てた。
「それ、もう1回俺の屋敷で言ったらこんなもんじゃ済まさないから。不死川さんも出てきて命の保証なくなるよ」
本気の脅しはこの場にいる全員に効果てきめんだった。