第20章 柱稽古とお館様
「それは君も同じだと思うけど……それに怪我を治せるだけで十分凄いんだから落ち込むことないよ。ほら、柱稽古終わったら……っとまだだった。さ、道場に行こっか!」
何かを言いかけた無一郎は取り繕うように話を切り替え、更紗の手を引っ張って廊下をずんずん進んで行く。
だが途中で話を止められた更紗は先が気になって仕方がない。
「無一郎さん、柱稽古が終わったら何があるのですか?何だかとても嫌な予感がするのですが!」
「何でもないよ!そんなに大きな声出したら鴉たちが起きちゃうんじゃない?せっかく気持ちよさそうに寝ているのに起こしちゃ可哀想でしょ?」
慌てて更紗も神久夜と要の様子を確認するが、どうやら相当お疲れだったようで熟睡中だ。
その様子に安堵するも、やはり何かを隠されている今の状況は更紗にとって、痒い所に手が届かないようなむず痒い感じに襲われ続けている状態に等しい。
「それはそうなのですが……その隠し事は無一郎さんだけじゃなくて杏寿郎君もご存知の内容でしょうか?」
「さぁ、どうでしょう?大丈夫、そんなこと忘れるくらいみっちり鍛えてあげるから!高速移動、得意じゃないんだよね?他のこと考えてる余裕ないよ!」
ぐぅのねも出ない。
不得意なことはいつもより気合いを入れないと成し遂げられないのだから。