第20章 柱稽古とお館様
「それは別に構わないけど夜に道場で何するの?伊黒さんのとこみたいに特殊な道場じゃないから、暗いだけで何もすることないと思うけど」
勢いがあり爛々と輝いていた更紗の表情は少しなりを潜め、言うか言うまいかと視線を暫くさ迷わせた後、何かを決意したのか立ち止まってしっかりと無一郎を見つめた。
「試したいことがあるのです。その……透明な世界を自分の意思で自在に見られるようになる為に」
その言葉に無一郎はポンと手を叩き合わせ納得したというような表情となった。
鬼が動きを見せ始めたと言う本部からの通達の他に、もう1つ伝えられたことがあったからだ。
「確か集中力が一定を超えると見える世界って話だったかな?それなら俺も一緒に試させてよ。俺は痣も出てるし、持ち得た状態は更紗ちゃんと同じだからコツさえ掴めれば出来るかもしれないでしょ?」
むしろ更紗より強い無一郎の方がより感覚を早く掴み、有効な新たな情報をもたらしてくれる可能性が高い。
「ぜひ!でも柱稽古で指導されるのでお疲れになると思いますから、あまり無理はなさらないで下さいね。私、怪我は治せても疲労は……治すことは出来ないので」