第20章 柱稽古とお館様
邪念と言うより無一郎の指摘が正しい。
今の更紗は常に体を動かしていた方が気を紛らわせるので有難い……ここに居ることによって無一郎や剣士たちに迷惑や被害を被らせてしまわせるのではないかという胸のざわつきが。
小さな護衛2羽に視線を落としながら廊下を歩く更紗の表情は未だに冴えず、無一郎は苦笑を漏らした。
「煉獄さんがいてくれたら君の心も晴れるんだろうけど、俺との手合わせはまだ先だからなぁ」
「あ、いえ!杏寿郎君がいてくださってもいて下さらなくても……もちろんいて下されば嬉しいのですが、そうではなくて……無一郎さんの継子でもない私がご迷惑を掛けることが申し訳なく思うと言いますか……無一郎さん!」
目の前で焦ったり顔を赤らめたりしょぼくれたり……コロコロと表情を変える更紗を笑顔で眺めていたが、突然物凄い勢いで名前を呼ばれ無一郎の肩がビクついた。
「どうしたの?何かまだ不安なことでもある?」
「不安なことはこれ以上はございませんが、お屋敷の中から道場へ行けるなら夜も解放してくださいませんか?煩くしないとお約束しますので!」
道場の使い道といえば基本的に技を磨くためだ。
それを煩くせずに何をするのか検討もつかない無一郎は頷きながらも首を傾げる。