第20章 柱稽古とお館様
無事に許可を貰えたことに安堵し、稽古場へと向かうために玄関から出ていこうとしたが、無一郎によってそれは止められた。
「待って、俺の稽古は道場でするんだ。その道場も屋敷から直接移動出来るようになってるから中から行こう。ここにいる間、あんまり更紗ちゃんは外に出ない方がいいよ、何が起きるか分からないからね」
慎重に慎重を重ね身を案じてくれるくれる無一郎が杏寿郎と重なり、更紗の胸の中が温かさで満たされる。
自由に動き回れないことで周りに迷惑を掛けてしまっているのに、誰も責めずあまつさえ守ってくれようとしている。
そんな人々の温かさが涙腺を刺激するが、ここで泣いてしまっては更に迷惑をかけると思い緩みかけた涙腺を引き締めた。
「お気遣いありがとうございます。ではお言葉に甘え、お邪魔させていただきます。代わりと言っては何ですが、私に出来ることは何でもお申し付けください。体を動かしていた方が邪念を捨てられますので!」
「君に邪念なんてあるの?もし鬼のことで俺に気を遣ってるなら、そんなこと気にする必要ないからね。一応柱だし、鬼から狙われるのは日常茶飯事だったからさ。あんまり思い詰めないで、稽古に心血注いでくれた方が俺は嬉しい」