第20章 柱稽古とお館様
「いらっしゃい、更紗ちゃん。俺の所では高速移動しながら攻撃を出来るようにする稽古なんだけど、君は得意?」
不得意です。
すばしっこさには自信があるが、無一郎の稽古の意味合いとは違うだろう。
「……足の速さに自信はありません。まだ持久力には最近自信がついたのですが」
「フフッ、じゃあ鍛え甲斐がありそうだね。早速始めようと思うんだけど……その子たちはどうする?君の腕の中で眠ってる鎹鴉」
無一郎の視線の先、更紗の腕の中では羽を休め小さな寝息を立てている2羽の鎹鴉……神久夜と要がいる。
杏寿郎から護衛を任されていたので無一郎の屋敷まではどうにか意識を保っていたのだが、到着した途端緊張の糸が切れ2羽同時に眠りに入ってしまったのだ。
「お邪魔でなければ稽古場の隅っこで寝かせてあげていてもよろしいでしょうか?護衛を杏寿郎君に任され、少し疲れてしまったのだと思うので」
誰の?と無一郎は聞きそうになったが、今朝本部からもたらされた情報から聞かずとも理解出来た。
目の前にいる更紗の置かれている状況に同情しそうになるが、首を振ってその考えを思考の果てへと飛ばす。
「そっか。その子たちが隅っこにいても邪魔にならないから、そのまま寝かせてあげてていいよ。周りの音で目を覚ましちゃうかもしれないけどね」