第4章 ギフト
『強く生まれた人間は弱き人を助けなければならない』という、幼き頃に母から託された言葉。
それは今も、鬼狩りとして生きる杏寿郎の信念として心に刻まれている。
「ごめ・・・なさぃ・・・っ」
腕の中で、か細い声がした。
ハッとして腕の力を緩めた杏寿郎は、名前の様子を伺う。
華奢な身体はカタカタと震え、大きく見開かれた瞳からは涙の雫がジワリと盛り上がり、今にも溢れ落ちそうだ。
「よもや・・・」
現炎柱である杏寿郎の怒気(といってもほんの少し憤っただけだが)は、一般人である名前には刺激が強すぎた。
そもそも、本人に記憶が無いのだから名前の言葉は全てが仮定の話に過ぎない。
故に、これは全て杏寿郎の過失である。
「す、すまない!」
杏寿郎はオロオロとして、涙を溢す名前の目元に手拭いを押し当てた。
「怒鳴ってしまって悪かった!俺が・・・守るべき者に守られてしまった俺自身が情けなくて、だな!不甲斐ない自分に苛ついたというか・・・その、君は何も悪くない!本当にすまない!」
しゃくり上げる名前を見下ろして、目についた包帯の覗く左腕をそっと撫でた。
「もう、こんな風に傷付いて欲しくないんだ、俺は・・・」