第4章 ギフト
「その菓子は確かに一度崩れたが、今は時戻りによって元の状態に戻っている」
「時戻り・・・?」
煉獄さんの言葉に首を傾げ、鸚鵡返しに問う。
そういえば、彼の口から何度かその言葉を耳にしている。
「君の記憶の中に、同じ時を繰り返したものはないか?」
「記憶・・・あ」
道場に現れた時の煉獄さんの様子を、何故か私は二通り覚えていた。
いつもの笑顔を浮かべた明朗快活な煉獄さんと、焦燥した様子で心配そうにしている煉獄さん。
少なくとも突然体調を崩した私をここまで運んでくれたのは、後者の煉獄さんな訳で。
そうすると、もう一つの煉獄さんの記憶は一体いつのものなのだろう?
「うむ!あるのだな?」
私の表情から答を読み取ったらしい煉獄さんが立ち上がり、グッと身を乗り出してきた。
間近に迫ってくる端整な顔に思わず仰け反ると、逃がさないとばかりに右肩を掴まれて引き寄せられた。
「恐らくだが、この時戻りの現象を引き起こしているのは君だ!そしてそれを認識しているのは今のところ、俺と君だけだ!」