第10章 体育祭
「名前」
声のした方に首を動かす。ギシギシと音が鳴りそうな動かし方だった
『セイジュウロウ』
「…緊張しているのかい?」
『バトン渡すの失敗したらどうしようって』
「じゃあ、おまじないでもしようか」
『おまじない?征十郎が珍しいね』
そう言った瞬間に征十郎にキュッと包まれる
その事に気づくと余計に心臓が動き出すが、既に今日キセリョファンと虹村ファンを敵に回していることを思い出し、こんな姿見られたら今度は赤司ファンにとんでもないことになるの屈んで抜け出す
『これ以上余計なことに巻き込むな!ただでさえ大変なことになってるんだからな!』
「今とさっき、どちらの方が緊張している?」
『人の話聞いてる?!』
誰にも見られてないか確認する。もう過ぎてしまったことなので見られていたとしたら相手を脅迫するしかない
怒っていると征十郎が楽しそうに笑っていた。おまじないとか言いながらこういうことするなんて彼の方が緊張でどうにかしているんじゃないかと思いながら水分補給をするため席に着く
プログラムこなしていくうちに始まる最後競技であるリレー、2年生から始まったリレーは先程1年生の第1走者の女の子が走り始めた
さすがは陸上部すごく速いなと思いながら見ていれば1位と2位が差のある現状2位の状態で涼太へとバトンは渡る
『ふぅ…』
深呼吸をしてる時は人って字を手のひらに3回書いて飲み込むというが、一向に動機が収まらない
第1レーンに入り、テイクオーバーゾーンに立つ。涼太が第3カーブを曲がったが、現状は赤組が僅差で2位だ
第4カーブを曲がろうとしている涼太を確認すれば、少し前を向きゆっくり走り出す
涼太が次第に近付いてくる。右手を出し、バトンを受け取ろうとする
「名前っち!」
パシッと音を発てながら涼太からバトンを受け取って走り出し、プレッシャーかなにかに押し潰されそうだが、とりあえず征十郎にバトン渡さなきゃと走る
気が付けば1位の選手が目の前、抜かそうと膨らむと足が何かにひっかかった
スローモーションのようにすべてがゆっくりになっていく。ああこれは転ぶなと思ったが、あきらめるわけにはいかなかった