第10章 体育祭
『負けるかあ!』
柔道の授業で習った前回り受け身をしてそのまま走る
前回りしたときに足を引っ掛けた子を抜かしたため見事1位に躍り出た。まさかの展開に観客席も盛り上がる
「派手に転べば…黄瀬くんも…」
キセリョのファンだったのかと後ろからくる暗黒なオーラが怖くて足がなおのこと速くなった
必死になって逃げていれば見えてきた征十郎、ちなみに未だに絶賛1位をキープ出来ている
『征十郎!頼んだ!』
「…ああ、任せておけ」
良い音を発ててバトンを渡す。征十郎は軽く微笑み颯爽と走っていった
トラックから避けて中に入ると、涼太が駆け寄ってくる。本当に犬みたいだとどこかで考える自分が居た
「名前っち!すごかったッスね、前回り受け身!さすがっス!」
『ん、ありがと』
「…名前っち、顔面蒼白っスけど大丈夫っスか? 」
『ははは、大丈夫、大丈夫だから…』
目の前の世界が揺れ始める。走り終わった後で良かったと考えながら、バランスがとれず一歩下がった
『はは、大丈夫じゃないかも…』
「名前っち!」
周りの景色がスローになっていく。さらに視界がグラグラ、ゆらゆらしていて、音も聴こえなくなっていき涼太が何か言ってるみたいだけども、まったく聴こえない
その瞬間にあたしは背中に軽い衝撃を受けた
「まったく、何をやっているのだよ」」
『…へ?』
「とりあえず保健室運ぶ、助けはいらん」
ああ慣れない一回転なんかして走ったのが原因かなんて分析していると、足に地面が付いている感覚がなくなり、今度は身体がゆらゆらし始めた
『運ばれてる?』
「全く無茶をするんじゃないのだよ」
『緑間、今日、借り物頑張ってたね」
「ふん。オレは保健委員だから運んでやってるだけだ」
『ははー優しいー』
焦点が合わないまま彼に運んでもらいそのまま保健室のベッドで爆睡してしまった
起きると緑間の姿はなく、征十郎があたしの荷物を持って待っており赤組は優勝したと教えてもらう
そりゃあんだけ1位とれば優勝するよなあと思いながら帰り支度をし、征十郎に家まで送ってもらった
ちなみに前回り受け身をした際に膝を怪我していたらしく、どでかい絆創膏がしばらく膝に滞在していたのは大変恥ずかしかった