第8章 夏祭り
そのまま歩いていると正面から見知った顔が歩いてくる。向こうもこちらに気が付いたのか手を大きく振り、駆け寄ってきた
今日も可愛いなと抱き着いてくる自分より少し背の高い彼女を受け止めると彼女が満面の笑みを浮かべていることに気が付く
「名前ちゃん!赤司君も!浴衣似合うね!」
『ありがとう。さつきは青峰と一緒に来てるんだね』
「うん。毎年一緒に来てるんだ」
「お前らなんか食ったのか?」
「来てすぐ食べたよ」
『色々食べたよね』
征十郎と一緒に食べたものを口に出しながら指を折っていくと誰かのお腹の音が鳴る。青峰からだった
周りが賑やかなのにも関わらず聞こえてきた音に笑うと青峰のことを「もう!」と言いながらさつきが叩く。痛くはなさそうだが気持ちは分かる
「うまかった屋台あったか?」
『どこも美味しかったけど』
「そうだね」
「も~どこも絶対並んでるんだから早く並ぼ!」
『いってらっしゃい』
「一緒に行く?」
『もうお腹いっぱいだよ。また明日部活で』
「そっか、また明日ね!」
来た時同様大きく手を振るさつきと対するように小さく手だけ上げ去っていく青峰を足して割ったくらいの感じで手を振った
人込みに紛れていく彼らの背中を見送り隣で待ってくれている征十郎と歩き出す
「段々混んできたね」
『やっぱ夜の方が人集まるんだろうね』
「下駄気を付けて」
『はい』
段々と足が疲れてくる。加えて鼻緒のあたりが痛くなってきて、歩くのが遅くなる
すると目の前を人が横切り、驚いて思わず足を止めた
赤い髪が遠ざかってく。走ろうと思えば走れるが足が痛いしどうしようかと赤い髪を見ていると、その髪が動いた