第8章 夏祭り
横にあった景品が入っている大きな袋を緑間が征十郎に向かって封を開け中身を見せている
色んなものが入っており、これを持って帰って置き場があるのか不安になる量に苦笑いを浮かべた
「赤司、良ければ好きなものを持って行ってくれ」
「おや、いいのかい」
「当ててくれた礼だ。ラッキーアイテムになるもの以外なら持っていくのだよ」
何でもラッキーアイテムになりそうだがと、一気に特賞と一等を当てられショックを受けている店主を見ながら考える
そんな店主が出してきた次の特賞と一等はゲーム機らしく、目の前で大当たりが出たからか小学生くらいの男の子たちが盛り上がっていた
「これにしようか」
「そんなものでいいのか。もっと持って行っても構わないのだよ」
「あまりもらっても荷物になるからね、いいんだよ」
「そうか。助かったのだよ」
緑間がお礼を言いながら大きい袋の持ち手を肩に掛け去っていく
よそ見をしていたので征十郎は一体何を選んだのだろうかと考えながら去っていく緑間に手を振っていると、横にいる彼に名前を呼ばれた
「名前」
『ん?』
横を向くと頭に手を添えられる。髪に何か刺さった感覚がするが自分からちょうど見えない
後頭部でまとめられている髪に触ると細い何かが刺さっていた
「良く似合うよ」
『何刺したの?串?』
「そんなもの刺すわけないだろう。かんざしだよ」
『かんざし?』
「ああ、かんざしくらいなら緑間もゆるしてくれるだろう」
どんなかんざしが刺さっているか分からないが先の方に丸い何かがついている
一般的なかんざしかと察するのと同時に、自分のものではなくあたしのために緑間からの景品を選んだのかと驚いた
『自分の欲しいもの選べば良かったのに』
「欲しいと思えるものはあまりなくてね」
彼の言っていることが本当なのかは分からないが、征十郎がいいならまあいいかと緑間が歩いていった方向とは逆方向に歩き出す
来た時より増えてきた人にぶつからないよう歩くのが大変だった