第8章 夏祭り
りんご飴を食べながら歩いているととある屋台に人だかりができていた
なんだろうと見に行くと、当てくじの屋台に背の高い緑髪の浴衣を着た男が何かにチャレンジしている様子が見える
そんなの思い当たるのは1人しかいないと、近づくと征十郎が彼に声をかけた
「緑間」
「…赤司、苗字」
『何やってんの?当てくじ?』
「オレはあの1等賞のプレミアがついたミニカーが欲しくてずっとやっているのだよ」
『プレミアがついたミニカー?』
「昭和に発売されたミニカーで、あれは空飛ぶクルマなのだよ
しかも音も鳴る。いろんな面で使えそうだ」
「空飛ぶクルマならおもちゃでもありそうだが」
「ないのだよ!飛行機ばかりだ。だがあれはプレミア、なかなか売ってないのだよ…!」
バスケをしている時より必死な表情の彼にどれだけおは朝に命をかけているのかと考えたが違う。おは朝に運命を握られているんだ
彼の近くにはどれだけくじを引いたのか、景品が入った大きな袋が置かれている
一体いくらお金を浪費したのか、溜め息を吐きながら征十郎と繋いでいる手を離す
『征十郎引いてあげなよ』
「引いたからって出るとは限らないよ」
『何言ってんのいっつも当てるくせに』
「1回だけだよ」
そう言って屋台の店主にお金を払った彼はくじを引く。とった三角の紙を開くと1等とは書かれていなかった
「特賞だ」
『なんで上の賞当てるの?!』
「オレに言われてもね」
『もう一回引いてみてよ』
特賞がなんなのかを見るとこちらもレアな電車の何からしい。ここの屋台はこういうプレミアがついたものを置いているのかと見ていると彼がその電車を受け取った
そのまま笑顔が引きつっている店主にお金を渡し、もう一回引くと征十郎の表情がわずかに変化する
「ああ、1等だ」
「赤司!」
『やっぱりなぁ』
珍しく目を輝かせている緑間とは正反対の表情をしてある店主を視界に入れつつりんご飴を1口含む
シャリシャリとした食感を楽しみながら緑間が喜んでいるなら何よりだと笑った